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【『数学する人生』を読んで】

 9月の半ばから読み始めていた『数学する人生』を読み終えました。

この本は独立研究家である森田真生さんが数学者岡潔の著書であったり世に出回っていない京都大学での最終講義をはじめとした数々の記録から岡潔の思想をまとめたものになります。

先に1つ感想を書いておくと、生きていた時代は戦前から戦後ですがこの時点で昨今上がっている問題に早々に目をつけていたことには驚きました。

現在の問題提起の先駆者であり、今問題に取り上げている人の中には岡潔にも触れている人もいるように思います。

 

 読んでみると分かりますが、世間一般的に思われているような数学者らしさではないと思うかもしれません。

むしろ後ほど触れますが、大学に入るまではご自身で文系の人だと思っていて、松尾芭蕉をはじめとした俳句といった文学に関心がある人です。

数学だけでなく文学、哲学、宗教、自然、人間学などありとあらゆる分野を一体のものとして考えています。

よってこの本を読んでみると、数学者ながら数学者らしくない内容だと思う人もいるのかもしれません。

むしろ数学に趣向がある人だとしても数学という学問を分立しているものと捉えているようであれば理解しがたいものかもしれません。

 

 ところでですが数学者についての本はこの著書も含めてこれまでに4冊読みました。

1冊はこの本の編著者である森田真生さんの著書『数学する身体』、もう1冊は小平邦彦さんの著書『怠け数学者の記』です。

itasan-kibunyasan.hatenablog.com

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岡潔と森田さんの関係はある種の師弟関係でしょうし、岡潔と小平さんは同時期に活躍された方々と、この3者を並べてみると不思議ながら面白い関係に思えます。

しかしこの数学者3人の著書から読み取るに共通していることは自然を愛し好んでいるということです。

どこか1つの地に永住はせず、その時々でいろんな地に移ってはその地での生活を深く味わっているのです。

そういえば高校時代に僕が尊敬していた数学の先生も自然の情景についての話をしていたのを思い出しました。

それから4冊目は秋山仁さんの本で、こちらは今までの3冊とは色が違うもののこの本の中で数学者になる適正は、

旺盛な好奇心や探究心、狙った獲物は必ずしとめる集中力や執着心、一つの問題に一途に打ち込む持続性、自分の欲望を満足させる貪欲さ、不思議なものを感じ取る感性、どんな世界でも、またどんな種類の人とともうまくやっていけるバイタリティーや順応性、挫折にくじけぬ忍耐力、自分に解けない問題などあるはずがないという自信(悪くいえば自惚れ)、そして、今が駄目でも明日があると開き直れる楽天家であること

と考えています。

このような特徴は確かにこの3人にはあるように思います。

 

 おそらく数学者に限らないことでしょうが、こういった人たちというのは関心を広く持つからこそ深さも生まれているのでしょう。

少しでもこのような方々に近づきたいなと思いました。